4月~6月の「日本美術史」講座では、日本絵画史の中で特別な個性を放つ
絵師や作品を取り上げています。5月23日(金)は秋田蘭画。直訳すれば江戸期
秋田藩におけるオランダ風絵画、ということになるでしょうか。

 鎖国時代にわずかに開かれていた西洋の国といえばオランダなので、当時の日本にとって
オランダ=西洋というイメージだったとすれば、蘭画とは”西洋風の絵”ということなのかもしれません。伝統的な画題をとりながらも、それまでの日本画ではタブーとされてきたシャドウや背景の挿入をはじめ、輪郭線をもたない描き方や極端な遠近法など、見る者を何とも不可思議な気持ちにさせるこれらの絵画群は秋田藩主を軸に1700年後半ごろに描かれたといわれています。
講師の佐々木正子先生は、ここに当時長崎出島から入ってきていた中国院体画の影響も指摘。
さらに時代背景から見ると、芸術というより実学的な面が強かったのではないかと・・・。
伝統的な形態に西洋絵画の手法を多く取り入れた和洋漢折衷の世界。
はからずも後世の人間の目には、非日常的な独特の魅力を感じさせるアートとして
映ります。
後継者も無く約20年あまりで消えた秋田蘭画ですが、その極端な遠近法は後代の浮世絵にも大きな影響を与えたともされています。日本絵画史上の確かな存在だったのですね!   

秋田蘭画の代表作↓

小田野直武「東叡山不忍池」(1770年代)秋田県立近代美術館所蔵

  次回6月23日(金)は「幕末の狩野派・永岳」。