蔵田敏明先生の講義「京都の春夏秋冬・喜怒哀楽」の2回目は、一時期を京都下鴨に暮らした作家・谷崎潤一郎をメインに。谷崎が愛した京都の味覚や贔屓の店の紹介に絡んで、執筆されていた『潤一郎新譯源氏物語』当時の担当編集者が書いた短いエッセーを読む。そしてすざまじいばかりに朱筆の入った校閲原稿のコピーにも思わず見入ってしまう。そうか、鳥岩の鶏肉が好き、銀閣寺の山月が好き、生菓子は松屋のがらん餅・・・なんて、のんきで贅沢な繰り言じゃなかったんだ。実は谷崎にとっての京都は、編集者とのすざましい仕事の舞台だったんだとあらためて知る。同じく当時の谷崎源氏の誕生秘話をテーマにした作家・瀬戸内寂聴氏のエッセーも併読した。同じ素材でも編集者の記すトーンとはずいぶん違ってこちらはかなり濃い味の恋愛譚になっている。ねっとり手の込んだ味わいか、水のような淡泊さか。いろいろあるから愉しめる。文学も京料理も。毎月第2日曜日、13時~14時半。