日本の過去と今とこれからを、いろいろな分野から考える連続講座「新・ニッポン考」が始まりました。初回は名古屋市立大学教授・吉田一彦先生が「日本人の死や宗教をめぐる文化史と現在、そして未来」と題して、歴史学の視点から。「現代から意味のある過去をピックアップして未来を展望する」という先生のお話に受講されたみなさんとともに聴き入りました。以下、勝手な感想です。

 日本は特殊な文化を独自に育んだ国ではない・・・(いや、そんなことはない。日本は島国で、世界のどこにもないような特別な国じゃん、だって「日本史」でそう習ったはずだし…)。

 これまで思い込んでいた日本特殊論とは違う視点、まずはここから吉田先生の話は展開する。神さまも仏さまも拝むという、いわゆる神仏習合も、日本にしかないものではなく東アジアを見渡せば各国、各地に見出せるのだ。日本の祭や物語にも欠かせない「鬼」は中国やインドの鬼神の概念が流れ込んできた更なる姿でもあるらしい。日本の歴史文化は東アジア史の大きな流れの中のひとつの類型。そう思うともう一度、「日本の歴史」なるものをおさらいしたくなる。国風文化、日本にしかない信仰、細やかな文物。狭い範囲で愛でていた時よりも、東アジアの大きな流れに照らして見た方が、逆に個性がはっきり見える。もしかしたら和風とは「和える」ことなのかも。異なるものを上手に柔軟に混ぜ合わせて新しい美や価値を生み出すことに日本人は特に長けているのではないだろうか。

 日本の宗教や文化はアジアの大きな流れの一展開だなんて嫌だ、日本らしさが否定されそう・・・なんていう冒頭の心配は無知からくる杞憂にすぎず、現在さかんに叫ばれている「誇らしい日本」「地方にしかない文化を観光資源に」という声にふと疑問を感じるだけの感覚もゲット。新視点を手に入れた「新・ニッポン考」の初回でした。さっそく続編のリクエストもあり。乞うご期待です。