役に立たないものの大切さ
古典文学の解釈論も古い言語の研究も、哲学も気の遠くなるような地球や宇宙の研究も、それ自体がどうなろうが、今この時の生活の利便には繋がらない。いや、実はつながっていくのだが、人生という短いスパンで損得を考える人間にとっては、何ら役に立たないものに思えるらしい。早々人間の役に立つと思われるものこそ研究する意義があるのでは?という認識が強く大きくなりつつある。無駄なものは要らんという主張ですね。そんな認識が席捲したらカルチャーは終わりだ。同時に本当のことが何も分からない暗くて息苦しい世界に成り下がってしまうに違いない。
 アリ150匹に色を塗り、約2年かけて観察し続けた長谷川先生の研究を評して「これを研究した人、ヒマだよね」というコメントを載せた新聞があったらしい(どこの新聞だ!センスが悪い!)が、そこから導き出された豊かで楽しい世界をこの講座で覗くことができました。「願わくば、いつまでも無駄を愛し続けてほしい。短期的な効率のみを追究するような世界はきっと長続きしない・・」。自称〝働かない働きアリ“の先生からのメッセージ。(2016・11/5 進化生物学者・北海道大学大学院准教授・長谷川英祐先生による120分講義)